ダブルワーク労働者の労務管理と労働・社会保険
コロナ禍により在宅勤務になったことを機に、副業を希望する雇用者数は増加傾向となってきました。
2020年3月31日に労災保険法の一部を改正する法律が成立しましたが、その中でダブルワーカーの労災保険給付のあり方について見直しが行われ、2020年9月1日に施行されることになりました。
これまで、業務災害、通勤災害によって被災し療養のため労働不能になった場合や死亡した場合の現金たる保険給付にかかる給付基礎日額は、発生した災害に関わる事業場から支払われていた賃金をもとに算定されていました。しかし、今回の見直しで、副業・兼業で複数の事業場で雇用されているダブルワーカーが業務災害または通勤災害を被った場合に関する保険給付については、雇用されているすべての会社から支払われている賃金の合算額をもとに給付の額を決定することになりました。
これまでダブルワークは珍しいことであったかもしれませんが、ダブルワークをせざるを得ない状況や、大手企業の副業解禁等、労働者にとってもダブルワークが身近なものとなってきています。ダブルワークの増加により社会保険の事務も複雑になってきます。
社会保険はダブルワークに伴い、2カ所以上の事業所で健康保険、厚生年金保険の加入要件を満たした場合には、それぞれの事業所において被保険者としての加入手続きをする必要があります。その際、被保険者本人に「健康保険・厚生年金被保険者 所属選択・二以上事業所勤務届」を届け出てもらうことでどちらの事業所で保険関係の手続きをするのか、どちらの保険者で保険証を発行するのかを決定します(選択・非選択事業所の記入)。選択事業所とされた事業所では、今後、この被保険者に関わる事務を行うことになります。